才川夫妻の恋愛事情
久しぶりの会話はそれだけ。
微妙に家での彼が覗いた会話にじれったくなりながら、そのまま三課の自分のデスクに戻ろうとしたとき。一番の目的を思い出した。回れ右をして松原さんの席に行き、雪崩が起こっているデスクの上にクリッピングのファイルを置く。これでもう、なかなか二課に来る用事もないだろう。
たった少しの会話があっただけ。
ゆっくり二人で話す時間を持てない間に、私には才川くんに話したいことがたくさんできていったけれど、その週も私たちはすれ違い続けた。
そして木曜日の深夜。
ベッドの中、ごそごそと動く気配に目を覚ます。
「ん……おかえりなさい」
「……ごめん、起こした」
シャワーを浴びてきたらしい才川くんがベッドの中に入ってきたところだった。
まだ完全に覚めきらない意識のなかで問いかける。
「……何時ですか?」
「今は……。夜中の、三時半」
「わぁ、遅い……」
言いながら、ベッドの上に置かれた彼の手をぎゅっと握って自分のほうに引き寄せた。手のひらの温度と、自分と同じボディソープの香りにほっとする。
才川くんは手をそのままに、ベッドの中で体を寄せて私の顔を覗きこんできた。