才川夫妻の恋愛事情
私たちは大学を卒業するのと同時に夫婦になった。
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クライアントから朝方、広告の実施報告書をあげてほしいと依頼があったので、才川くんと私は午前中ずっとその資料のまとめ作業にかかりきりだった。みんながお昼に出ている間も黙々とキーボードを叩いて、才川くんが送信ボタンを押したのが午後二時前。
少し遅めの昼食を食べに出た。何の相談もせずにただ才川くんの後ろを着いていくと、会社の人もあまり存在を知らない穴場のお蕎麦屋さんに行きつく。路地を一本入らなければ見つけられないここは、才川くんと私が二人だけで昼食を取るときには良く来るお店だった。
「この間の歓迎会のときのこと、いろんな人にいじられるんですけど」
「ん? 何の話?」
「……」
才川くんは頬杖をついてニコニコと笑う。……白々しい。白々しいけどこの変わりよう、慣れたとは言え感心してしまう。家での彼とはあまりに違いすぎる。最初の頃は、自分の夫は本当に二重人格なんじゃないかとわりと本気で悩んだものだ。とても……あの夜、散々私の体を弄んだ上に放置した男と同一人物だとは思えない。
「……結局最後までしないし」