才川夫妻の恋愛事情
「みつき。あれ、ネクタイ引っ張るやつ……あれちょっと首苦しい」
それかい。
「知らない」
「なにほんとにいじけてんの?」
「……知りません! 先にお湯いただきます」
そう言って彼のジャケットの皺を伸ばしてハンガーにかけ、自分はそそくさと脱衣所へと向かう。
「ダメだ」
「わ」
手首を掴まれて、私の進路は阻まれた。一番風呂は譲らないとか、どこまで亭主関白気取りですか! と本格的に夫婦喧嘩に持ち込もうとしたら、グイッと強く掴まれていた腕を引っ張られた。
「……え?」
私は簡単にバランスを崩す。引っ張られたのはソファのあるほう。二人して倒れこんで――気付けば、私が上に乗っていた。
彼の胸の上で、至近距離で目が合う。
「……才川くん?」
「痕つけていいよ」
そう言って才川くんはシャツのボタンを上からはずして首元を私に差し出す。
「……」
「浮気防止に。俺が合コンに行くのも嫌なんだろ? どうぞ、奥サン」