二度目の恋


食事も一通り終わり、ワインを飲んでいた


「当時は毎日残業でさ……」


部長がまた当時、の話を始めた
ただ、さっきとは声のトーンが違った


「毎日日付が変わってから家に帰っていたよ、娘も妻も……寝静まった後に。それでも、家族のためって思ったら頑張れた」

「部長昇格の話が出た時、これからは時間に余裕が出来るから家族との時間が作れるって思ったんだ。けど、その時には遅かったんだ」


部長の話に私は何も言えず
ただ、部長の顔を見ていた


「妻はこんな生活が限界だったみたいでね。…小さい子を抱えながら誰にも相談出来ない環境に俺は気付きもしなかった。離婚後、妻は娘を連れて実家に帰った。二度と娘にも妻にも会えないって思ったけど、今はたまに会えてるんだ」


そう言って笑った顔が
とても寂しそうだった

子供……のこと、奥さんのことを
考えたら自分を重ねてしまった
< 176 / 269 >

この作品をシェア

pagetop