二度目の恋



歩いて行ける距離……が、行けない
生まれたての子鹿かっ、てくらい
前に進めない


付き添ってくれる看護師さんは
陣痛が押し寄せてくるたびに
腰を押してくれる


一輝は……抱きかかえたい、のか
手を差し伸べたいけど、看護師さんがいるし……みたいな、ソワソワしていた


それが、あまりにも可笑しくて笑ってしまう



なんとか分娩室にたどり着いた
そういえば、遥輝と里美ちゃんは?と
思ったけど、里美ちゃんが持っていたペットボトルは一輝が持っていた


「旦那さん、奥さんの腰を押してあげてくださいね。ココですよ、ここっ!」



「はい、ここですね!」

『ゔっー、違っ!もう少し上っ』

「ここ?」

『違っう、…んーっ……もう少し右』

「ここ?」



違う……けど、もう何も言いたくない
痛みが半端ないから、手すりを掴んで耐えるしかない、役立たずっ!


っと思っていたら、ぐいっと押された


「柳原さん、頑張りましょうね。旦那さんは奥さんの手を握ってあげてください。水分補給も必要ですから」


慌てて移動する一輝
今日は意外な一面が多々見られたな


そんな事を考えていたら
「全開です」と聞こえてきた
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