溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「だから、走り屋じゃないですってばー」

「お前の上司は俺だ。
 俺がいいと言ってるんだ。

 俺の上司は此処には居ないから、俺には誰も許可が出せないがな」

「そうかもしれませんけど、やめときます」
とメニューを閉じる。

「なんでだ」
と昌磨はメニューの上からこちらを見る。

「だって、これで呑みたいだろうって思う人は、自分がそれで呑みたい人ですよ。

 そういう酒呑みの前で、一人が呑めませんよ」

「……誰が酒呑みだ」
と言ったが、わかったわかった、と昌磨は言い、結局、普通にランチを頼んだ。

 結構話した気がしたが、思い返すと、一番昌磨にウケていたのは、五人の上司のモノマネ、五連発だった。

 あとで、
『あんた、そんなことやってちゃ、いつまでも彼氏できないわよ』
と同期の新原佐奈(にいはら さな)に言われたのを思い出し、ちょっとへこんだが、まあ、課長が笑ってるからいいか、と思った。

 そして、意外と緊張せずに食べられた自分に気づいた。

 でも、ずっと緊張してなきゃいけないような相手じゃ、付き合っててもきついよな。

 いや、まあ、今現在、付き合ってはいないのだが……。


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