溺愛御曹司の罠 〜これがハニートラップというやつですか?〜
「うーん。
着いたーっ」
会社の地下駐車場に降りた花音は、大きく伸びをする。
「つきあわせて悪かったな」
と昌磨が言ってきた。
「いえー、楽しかったですっ」
まるで、仕事中にデートしてるみたいで、本当に楽しかった。
ああ……戻ったら、また仕事しなきゃ、とテンションが下がりかけたとき、昌磨が言った。
「ところでお前、今朝、なんで俺の手をつかんで叫んだ」
「……え」
今、訊きますか、それ、と思った。
どうせなら、車の中とかがよかった。
会社に着いてからなんて、誰も居ない場所でも、ちょっと恥ずかしい。
「あ、あのですね。
実は……」
実は……なんて言おうかな、と思った。
実は、貴方の手が好きなんです。
いや、変だ。
今朝、助けてくれたのは貴方ですか?
貴方が好きなんです。
いやいや、ストレート過ぎだろ。
好きなの手だし。
なんとか此処は誤魔化して――。
「行くぞ、芹沢」
なにも答えないでいると、そのまま昌磨は行こうとする。