溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜




「芹沢花音」
「はい」

 どうした。元気がないな、と昌磨が言ってきた。

 回覧を持って、ハンコを押してもらいに行ったときのことだ。

「いえー、ちょっと」

 私が合コン行っても、課長はなんとも思わないよなーと思ったら、昨日、課長と帰ったりしたこととか、なんだか夢だったみたいな気がしてきて、テンションが下がってしまったのだ。

「そういえば、課長。
 今日、朝、電車で一緒にならなかったですね」

 車を置いて帰ったから、今日も電車に乗ると思っていたのだが。

「ああ。
 ちょっと出遅れて、タクシーで来たからな」

 ……大嫌いだ、お金持ちなんて。

「時間が合えば、タクシーより、電車の方が早いですよーだ」
と小さな声で言ってハンコを押してもらった回覧を取ると、

「なんの負け惜しみだ」
と言われた。

 だって、せっかく、一緒に乗れるかな、と思っていたのに。

 結局、今日も拓海と二人で、罵り合いながら来てしまった。

 ああ、でも、昨日の課長、格好よかったなー。
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