早く俺を、好きになれ。


しばらくすると、虎ちゃんは何も言わずに歩き出した。


声をかけることなんかできなくて、小さくなっていく虎ちゃんの背中を見ていることしかできない。


取り残された私は、涙がこぼれ落ちないように必死に顔の筋肉に力を入れた。


虎ちゃんと、このまま友達でいるのはムリ。


それは……私が望んだこと。


だから、私が泣くのはまちがってる。


でも、我慢できない。



「んだよっ……あいつ。マジ、ありえねぇ」



ひとりごとのように斎藤君がつぶやく。


大切な仲間を失ってショックを隠しきれていないのか、その顔はとても悲しげなものだった。



「ごめ、ん……私の、せいだよね?」



私が……私が虎ちゃんを追い込んだから。


そのせいで、虎ちゃんはバスケを……。



「市口さんのせいじゃない。あいつ……学校祭前ぐらいから伸び悩んでたから」


「え……?」



学校祭前から?


初耳だった。


だって、虎ちゃんが伸び悩んでるなんて知らなかったよ。



「そんぐらいの時期からミスを連発しててさ。俺らには何も言わなかったけど、相当悩んでたんだと思う」


「…………」


「スランプってやつだな」



スランプ……。


< 252 / 307 >

この作品をシェア

pagetop