早く俺を、好きになれ。


まだ私と虎ちゃんが笑い合っていた頃、もしかすると虎ちゃんは泣きたいくらいツラかったのかもしれない。


スランプに陥るって、きっとすごく苦しいよね。


そんな中でも、虎ちゃんは私の心配をしてくれた。


どんな時も、笑顔を絶やさなかった。


きっと、笑えないぐらいツラかったはずなのに。


そんな虎ちゃんを想うと、後悔せずにはいられなかった。


だって私は、ひどいことを言って虎ちゃんを傷付けることしかできなかったんだから。


なんて……なんてバカなんだろう。


嫌われても当然のことをしてしまった。



「マジで市口さんのせいじゃないし、泣くことないから。これは、あいつ自身が乗り越えなきゃなんねー壁なんだよ」



いつもはチャラチャラしてる斎藤君が、私の背中を優しく撫でてくれる。



「けど、なんか悔しい。壁にぶち当たってんのに、俺に何も言わないなんて。親友だと思ってたのは、俺だけだったのかよ」


悔しそうに唇を噛みしめる斎藤くん。



そんなことない。


そんなことないよ……。


虎ちゃんはきっと、悩んでても誰にも相談しなかったと思う。


1人で抱え込んで、誰にも弱さを見せなかったと思う。


ツラくてもムリして笑って、私たちに心配させまいと努めていたんだろう。


虎ちゃんは……そういう人だから。


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