早く俺を、好きになれ。
「いいだろー。俺、咲彩のスッピン好きだし。むしろ、化粧してない方が俺的には良いんだけど」
「べつに……虎ちゃんのタメにやってるわけじゃないし」
私は自分の地味なスッピンが大嫌い。
だって、可愛くないもん。
武富君に可愛いと思ってもらいたいから、早起きして頑張ってたんだし。
でも、織田さんがいるからそれももう敵わない。
武富君が私を好きになるなんて、天と地がひっくり返ってもありえないことなんだ。
そう考えると、胸が締め付けられて苦しかった。
彼女がいる武富君をまだこんなにも好きで、諦められない。
未だに可愛いと思ってもらいたい私がいるなんて、バカだよね。
私のことなんて眼中にないのに。
見てくれないのはわかりきってるのに、そんな風に思うなんて。
「じゃあ、誰の為にやってんの?」
急に低くなった声に驚いて虎ちゃんを凝視する。
いつもふざけてばかりいる虎ちゃんには似合わないほどの、真剣な横顔。
一瞬で空気が変わったような気がした。
なんかやだ。
虎ちゃんとはこんな真剣な空気になりたくない。
冗談を言い合って笑っていたい。
「そんなの、虎ちゃんには関係ないでしょー!」
冗談っぽく笑って見せた。
武富くんを好きなことは、虎ちゃんには絶対に言えない。