早く俺を、好きになれ。


彼女がいて傷付いていることも、私の中にある黒い心も知られたくない。


惨めな私を知られたくない。


だからーー。



「あ、今度の土曜日練習試合でしょ?蘭と応援しに行くからね!」



無邪気に笑って話をそらした。


そうでもしないと、虎ちゃんの前で笑えなくなりそうだったから。



「関係あるよ。咲彩が誰の為にオシャレして頑張ってんのか、俺にはすっげー関係ある」



真剣な目で見られてドクンと鼓動が鳴る。


そんな目で見ないでよ……。


すべてを見透かされているような気がして、虎ちゃんの前でヘタな言い訳ができなくなるじゃん。



「わ、私だって虎ちゃんに言いたくないことのひとつやふたつくらいはあるの」



「ふーん」



「…………」



ど、どうしよう。


気まずい。


蘭に助けを求めようとしたけど、遥か前を歩いているからそれも出来ない。


でも『武富君のため』だなんて、口が裂けてもそんなことは言えない。


同じクラスだし、席も隣だし。


虎ちゃんに知られちゃったら、恥ずかしくて武富君のことが見れなくなるもん。



「咲彩のバーカ。寝ぐせ付きすぎな」



虎ちゃんの腕がまっすぐに伸びて来て、私の髪に触れた。


フッと笑った横顔が目に入ってホッとする。


良かった、いつもの虎ちゃんだ。


優しく愛でるように触れる虎ちゃんの手の温もりが心地良かった。



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