主任は私を逃がさない
「ねえ、そんな堂々としちゃっていいの?」
「なんでコソコソする必要があるんだよ?」
「だって、もし会社の誰かとバッタリ会ったら?」
「そりゃ決まってるだろ。誰かと会ったら自慢するさ」
史郎くんは躊躇するあたしの手を取って強引に自分の腕に絡ませ、本当に嬉しそうな顔をして言った。
「俺と陽菜の仲なんだからな。隠す必要なんかどこにもない」
「…………」
「今日は久しぶりに陽菜とこうして出掛けられて、すごく嬉しいよ」
……史郎くん。
私服姿の史郎くん。
会社の中じゃなくて、久しぶりに明るいお日さまの下で彼の笑顔を見たら、不意に小さい頃の記憶が甦ってきた。
私と一緒に公園の砂場で遊ぶ史郎くんは、周りの男の子たちによくからかわれていたんだ。
『こいつ、男のくせにオママゴト遊びなんかしてやがんのー!』
『西田史郎は女の子ー!』
『なんだよ。お前、その子と結婚すんのぉ?』
怖くて恥ずかしくて萎縮してしまった私とは正反対に、史郎くんはいつも堂々としていた。
そしてケロっとした顔で言い返していた。
『うん、そうだよ。俺と陽菜は大人になったら結婚するんだ』