主任は私を逃がさない
「これ、うちの旦那からお嬢さんにサービスね」
溌溂とした声と一緒に、白玉ぜんざいの器が私の席にスッと差し出された。
見れば割烹着姿のおばさんがニコニコ顔で私の横に立っている。
「あ、ありがとうございます」
「なんだ、陽菜だけ? 俺にはサービスしてくれないの?」
「誰が野郎にサービスなんかすっかよ! 俺にそっちの趣味はねえ!」
厨房から御主人の威勢良いガラ声が飛んできて、おばさんと史郎くんが声を揃えて笑い出す。
「古い店でビックリしたでしょ? うちの旦那は儲けのことなんか考えないから、店の改装費も出せなくて大変よ。今時、こんなボロ食堂なんかどこにも無いわよねぇ」
「うるせえよ! 飯屋ってのはなあ、飯がうまけりゃそれでいいんだよそれで!」
「あーハイハイ。ガンコ親父のところになんか嫁ぐもんじゃないよ」