主任は私を逃がさない
溝口次長の言わんとしている事がようやく理解できた私は、伝票をひったくるように受け取って目を凝らした。
これ、キャンペーン開始日よりも前の日付けになってる!
これじゃ次長のキャンペーンセールスポイントに加算されない!
そうなった原因に身に覚えがある私はすっかり青ざめ、手の平にジトッと嫌な汗が噴き出るのを感じた。
「今日以降の日付けで計上してもらうから、メーカーに仮伝票で出荷してもらうように手配しろって言ったはずだ」
「す、すみません。先方に伝えそびれました……」
「メーカーはとっくにキャンペーン前の売り上げを締めて請求書を作成したはずだから、もう操作できない」
溝口次長の釣り目がちの目が半開きになり、私をジロッとねめつける。
目付きも声も明らかに鋭い棘があり、かなり怒っている様子だった。
それもそのはず。キャンペーンは全国の営業マンの熾烈な戦いの場でもあるんだ。
ランキング上位者は表彰され、報奨金やら海外旅行接待やら、メーカーから下にも置かない歓待を受ける。
全国的にも名前が知られて、業界各社から一目置かれる存在になるし。
その栄誉を得るために、営業マンはキャンペーン期間中はポイント獲得に躍起になる。
うちの父親も何度か表彰された事があるから、私も事情はよく知っていた。