主任は私を逃がさない
なのに、ヘマをした。
機種や数を間違えないようにと、そればかりに気を取られて日付けの事をすっかり失念してしまっていた。
ど、どうしよう。この総額なら溝口次長にかなりのポイントが付くはずだったのに。
それを私がダメにしてしまった……。
私はオロオロ動揺しながら背中を丸めて、消えそうな声で謝った。
「すみ、ませ、ん」
「すみません、じゃ済みません。どうしてくださるんですか?」
「すみません。本当にすみません……」
「謝られても困ります。謝罪するよりも、この件を解決して下さい」
溝口次長は、不自然に丁寧な言葉遣いで私を責め始めた。
次長は部下がミスをしたり、気に入らない事があると、自分よりもずっと階級が下の相手にわざとバカ丁寧な言葉遣いをする。
しかも溝口次長は、私の父をライバル視していた。
父は何度かキャンペーンで表彰されたけど、この人はまだ一度もされたことがない。
出世も先を越されてしまったし、そんなこんなでいつも露骨に父を敵対視している。
そのライバルの娘である私が自分の足を引っ張ったものだから、憤懣やるかたないだろう。