living
一度帰ってから、大学へ

「花菜…電話出ない」

朔哉がポツリと言う


「もともと出ないだろ」


「どっかで倒れてねぇかな?」


「悪いこと考えるな!」


と言いつつ

今日、仕事休んで花菜に付き添う予定だった母さんに、メールする

誠実さんにも連絡なくて

まだ帰ってもいないらしい


「ごめん…朔哉…俺が言い過ぎたから」


今日の講義が終わり


講義中、凄え眠気に襲われたけど
一気に元気になった気がした


「見付けたら連絡くれよ!」

「おう!!」





花菜が好きな店も

いつも立ち読みする本屋も

ふらりと寄るコンビニも

どこ捜してもいなくて


オマケに夕立


雨に濡れながら、携帯が防水でよかったとか、どうでもいいことが頭をよぎる

俺は、花菜と番号交換していない


だけど…


朔哉から電話がなったとき

亜依里がかけてきた

あの日を思い出した


「もしもし、朔哉…
俺…花菜の居場所わかるかも!
俺んち行って風呂入ってろ!
着替えは、俺のでいいだろ!」


コンビニで傘を買い、走った


公園の滑り台の下に花菜がいる


確信していた


「花菜!!」
 
「伊緒里……」


びしょぬれの俺は、滑り台の下にいて

濡れていない花菜を抱きしめることが出来ない

濡れた髪をかきあげ

花菜の前に座る

「花菜… 俺… 花菜が好きなんだ」

驚いてあげたい顔

花菜にキスした


予想外に真っ赤になって、亜依里の時より

断然、暴れ出した

「はっ…初めてなのに!!!
滑り台の下とか!!有り得ない!!」

台詞が亜依里と似てて

ん?

「初めて?」

「当たり前じゃない!!伊緒里のタコ!!」

ゆでだこみたいな顔して言うか?


「ごめん…花菜にするの2回目」

「はあ!?」

「なんと、亜依里に泣かれた」

「もしかして… だから寝る場所かわったのか?志緒理が真ん中がいいとか言い出したのは、そういうことか?」


ギロリと睨まれた

「はい……すみません」

「最低!!!」

だんだん、亜依里と花菜が似てきた気がするけど

「帰ろうぜ」

「うん」


びしょぬれの俺がさす傘に入って


俺を見上げる


「雨やんでるよ」

「あー本当だ…気づかなかった」


俺…ダサッ


「ありがとう…伊緒里…
迎えに来てくれて……亜依里がさ
ここにいたらいいって
あたし、初めて亜依里の声聞いたんだ」

そう言って、花菜が俺の左手を握ってくれた

「帰ろう」

「うん」


そのまま手を繋いで帰ると

「離れろ!!伊緒里!!」

俺の服着た朔哉が、俺達を引き離そうとする

「朔哉、伊緒里があたしのこと好きなんだって」

さっきは、あんなに真っ赤にしてたのに

母さんや誠実さんもいるのに

んな事言うか!?

「知ってる」

「あたしも伊緒里が好きなの」

「「ええーーー!!!」」

朔哉と2人で声を張り上げた


「あら?私達、気づいてたけど?」

「花菜がこの家から、出たがらないもんな」


マジかって、花菜見たら真っ赤になってて

かなり嬉しい


「朔哉義兄さん!よろしくお願いします!」

「あーあ 伊緒里に花菜を盗られたよ」







亜依里の命日の翌日が


俺と花菜の記念日になった






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