living
時間

兄の友達

すっかり寒くなった今日この頃


ぽっかり空く心

ふと、隣にいる朔哉に視線を移す

「朔哉?どうした?」

朝から元気がない… 花菜に何かあった?
心配になって、聞いてしまった

「ちょっと花菜のことで……
伊緒里… 相談していいか?」

「俺でよかったら」

「花菜さ……ずっと髪型同じだったよな?」

「そうだな」

「家で染めたりしてた?」

「いや」

「生え際、プリンになってるの見たことあるか?」

「いや……つか、なんだ?この質問」

「胃潰瘍が酷かったし、心臓が良くなくて
まだまだ退院出来そうにないんだ
最近、やっと家族の名前を覚えた
記憶が維持出来ないみたいでさ
覚えるまで、大変だったんだ」

「そうか……」

「それでな、病院拒んでただろ?」

「ああ」

「今まで、亜依里ちゃんが花菜の体の時間を止めてたんじゃないかな?
入院してから、信じられない早さで
髪や爪が伸びるんだ
毎日、爪切ってるんだぞ
髪なんて、肩くらいだったのに
腰まであるんだ」

「マジ?」

「あと、点滴!!
点滴見ながらさ、減ってくって
点滴のことじゃなくて
1本につき1日寿命が減るようなこと言ってて
そんで、3本点滴した次の日
凄え髪伸びてて
両親に退院させようって、言ってんだけど
退院したところで、亜依里ちゃんいないわけだから、病院にまかせようって」

「時間が動きだした……」


「そうなんだよ…
俺の歳に追いついて、そのうち追い越すんじゃないかって、心配でたまらないんだ」

「朔哉… 遠目に姿見ちゃ駄目かな?」

「……いいよ」










おこがましいのは、十分承知



朔哉と病院へ


俺は、廊下で待機

今日は、花菜が散髪の為、病院の美容室に行くことになっていたそうだ

「さくちゃん!遅い!!」

花菜の声

公園で亜依里が俺に言う口調だ


「さくちゃぁーん、また髪伸びた!
早く切りたい!」

「今日、美容室の予約とれたから、行こうな
はい、車椅子に乗るぞ」

心臓の調子が悪いから、車椅子での移動



ガラーーーッ




花菜の髪は、毛先20センチが金髪で
腰まである


「わっ さくちゃん!イケメンがいる!」

「花菜… 俺の友達だよ」

「えー?さくちゃんにイケメンの友達?」

「悪ぃのかよ」

「佐久間伊緒里です」

「さくちゃんの妹の花菜です/////」

「何、照れてんだよ!!」

「えへへっ えっと イケメンさん
さくちゃん共々よろしくお願いします!」

「伊緒里、部屋で待ってて」

俺を残して、行った

イケメンさん……か

名前が覚えられない

記憶の保持が出来ない



耳の下までばっさり切った花菜は


コケシみたいで、可愛い


「どなたですか?私の部屋ですけど?」


「俺の友達で、佐久間伊緒里!
ここで待ってて貰ってたんだ
一緒に勉強しよっかなって」

「さくちゃん、友達いたんだ?
毎日来るから……いないのかと……
お勉強頑張ってね!
あ!すみません……
お待たせして!さくちゃん!またね!!」

「いや、時間はあるから」

「私、今から点滴だから
さくちゃんと遊んであげられないもん」

遊んであげてるんだ

こういうとこは、花菜っぽい

「花菜ちゃん!お大事にね!
また来ていいかな?」

「ん?あ?待ち合わせに使うの?
どうぞ?」





俺達が部屋を出て、看護師が点滴に入って

すぐに部屋を出た



それから、朔哉と2人で部屋に入る


「さくちゃん!来てくれたの!遅いよ!
ねぇ、私髪の毛短くなったの!どお?」



「すげぇ似合ってる!!!可愛いよ花菜!」


朔哉が、演技をする

「こんにちは!花菜ちゃん!
朔哉の友達で佐久間伊緒里です!」

俺も、頑張る


「初めまして!!」














花菜の前では、笑顔を貫いたが

ショックすぎ……


「伊緒里… 合わせてくれてありがとう
毎日、あの調子だ
やたら、気をつかうとこは前と変わらない
でも、ほんの少しトイレとかで離れたら
会話の内容も全部忘れて
また、最初から……
毎日来るから、名前と兄って事だけ
覚えてくれた
1日でも、会いに行かなかったら、忘れられそうで…」

「俺の事は、覚えられそうになかったな」

「毎日、通うか?」

「朔哉の親父さんに見つかったら、刺されそうだから、やめとく」

「そっか……」








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