living
翌日


花菜が発作を起こしたと連絡があり

朔哉について、俺も病院へ


寝ているけど


髪が伸びてるのがわかる


「退院した方が良くないか?」

「俺もそう親に言ってるんだけどな」

このままだと、せっかく良かった体調が
どんどん悪くなりそうだ



「伊緒里君…… 来てたのか」



真っ青な顔した花菜の父親

泣いてる母親


「おじゃましてます」


「朔哉… 再発したそうだ
もう、移植も出来ない
今度…大きな発作があれば、覚悟しておいた方が良いそうだ」


「連れて帰ろう!!
点滴さえしなければ、時間が止まる!!」

「何を言っているんだ!!!
点滴で、命を繋いでいるんだ!!!」

「2人とも!!冷静に!!!」


花菜と暮らした

1年間を話した

病院を拒んでいたことも


「うちにいたとき…
髪が伸びなかったんです
どうか!!
1週間だけでも、連れて帰って試して下さい
このままじゃ……」




「あなた……
連れて帰りましょう」




正気ですか?と医師に止められた

それでも、花菜の家族は頭を下げた



「少しでも、具合が悪ければ
戻って下さいね!!」




とっても不満そうだったけど



「これが、最後の外出かもしれません
どうか楽しくすごさせて下さい」




そう言って、送り出してくれた





まだ、意識の戻らない花菜を抱いた父親が

「軽いな……
子供の頃とちっとも変わってないようだ」


病室から車まで、懐かしい気持ちを噛み締めているようだった


「伊緒里君も乗りなさい」

「いえ……家族水入らずがいいでしょう」

「目が覚めたら、連絡する」

「おう」







井原家を乗せた車が、見えなくなって

とぼとぼと歩き


たどり着いたのは、公園


滑り台の下に入って、亜依里がいつも座っていた場所に座る


ぷつりと糸が切れたように


俺は、泣いた



なんで、花菜を手放したのか



嫉妬で、醜くなった自分が浮気して

こうなったのは全部


俺のせいだ……




あまり人の来ない公園で良かった


真っ昼間に滑り台で大泣きする男なんて


通報されそうだ


!!!



「え……」



顔を上げ、驚いた



〝伊緒里へ

新しい彼女と仲良くやってる?
亜依里には、いつまでもお兄ちゃんが
迎えに来ると思うなって、言ってある
亜依里がいじけても、もうここに来ないよ
誠実を味方につけろって、教えた


      読んだら消してね  花菜〟






新しい彼女って…

見られてたのか…



なあ?




花菜…




亜依里じゃなく



お前を迎えに行きたい








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