グリッタリング・グリーン
かっこいい、と純粋に思った。


自分の仕事への自負と、自信。

新しいことに挑戦するドキドキを、隠しもしないで、こうして見せてくれる。

その飾らなさ。


葉さんはもう、乗り越えたんですね。

自分の努力で、作品を世に認めさせて、意見する力を、手に入れて。


過去にそれが許されなかったのは、自分が未熟だったからだと、シンプルに受けとめて。

ただただ、上を向いて、前進してきたんですね。



「今朝のこと、改めて謝るよ、ごめん」

「えっ?」



急に話が変わって、なんのことかわからなかった。



「エマを泊めたりして、軽率だったよ、俺そういうの、ほんと気がつかなくて」

「でも、泊めちゃいけない理由も、ないですし」

「あるだろ、生方に好きって言ってんのにさあ、誠意なさすぎって思われても、仕方なくない?」



すねたように言って、革張りのソファにスニーカーのまま、足を引きあげてしまう。

体育座りみたいにひざを抱えて、難しい顔で煙を吐いた。



「生方だって、気分悪いだろ」

「いえ、そんな」

「えっ、悪くないの、それショックなんだけど」

「わ、悪いです」



だよね、と笑う無邪気な顔を見てたら、気が抜けた。

なんて裏表のない人。

何考えてるんだろう、とか、真意なんて探ったところで、時間がもったいないだけかもしれない。



「…私、余計なこと考えて、空回りしてました」

「考えてたのって俺のことでしょ、余計じゃないよ全然」

「………」



葉さんて、ほんと思ったこと全部、口に出ちゃうんだな。

だんだん家みたいにくつろぎはじめた葉さんは、背もたれに片腕を回して、遅いな、と階段の下からひょいと顔を出し。

やべ、とすぐに引っこめた。

追って聞こえてきた、慌ただしく下りてくる足音と、知った声。

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