ほっといてください、王子。

「安住ちゃん、そうカリカリしないで。悪かったって。ね?許してよ。」

「何よ、下手に出れば機嫌が直るとでも思ってるの?」

上目遣いでこっちを見る王子をばっさりと切ってやる。

「許すとか許さないとかじゃないの。…ちょっとショックだっただけよ。」


ほんとうは私が悪いんだ。
分かっていても王子は優しい言葉をかけてくれるから、余計に素直になれない自分が嫌になってしまう。


「やり直そっか?」


「いいわよ。もう時間無いし。…チーフから10分で戻って来いって言われてるの。」


思わず溜め息が零れた。


こっちがどんなに忙しくしていても、王子はいつも余裕がある。

髪を振り乱して働いている時だって、よれた化粧を直しに行けない時だって王子ばかりがかっちりとキマッている。
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