初心者オコトワリ!
突然の告白に言葉も出せずに、呆然としていると、彼はどこか、照れくさそうに続けた。

「早く仕事終わらせて、帰りましょう。帰りに、夕飯に付き合って下さい。俺、ご馳走しますから。」

私の返事を待たずに、彼は自席へと戻っていく。
私は、呆然としたまま、手元に目を落とした。

今日は、もう何も手につかないかも。

そう結論づけて、手元の書類の束を近くの鍵付きのロッカーへと片づける。


「続きは、明日ね。」

“彼”に向かってそっと呟けば、少し意地悪な返事が返ってきた。

「俺ともっと気持ちいいことしたくないの?」

その言葉に思わず、苦笑する。

「そりゃ、もちろん。でも、アラサーOLにとっては、現実世界の恋の方が大切なのよ。」
「つれないねえ。長年連れ添った仲なのに。」
「まあまあ、そう言わずに。」
「はいはい、せいぜい頑張ってこいよ。」

“彼”のレバーをきちんとロックしてから、私は立ち上がった。


「また、明日ね。」

そっと、長年の相棒に声を掛けてから、私は葉山君を追いかけた。


(おしまい)


※切れ者の彼=裁断機(ペーパーカッター)
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