仮氏
「自然な感じだって!」

と彼は笑顔で言った。

(そりゃあ、やることやってるからでしょう)

そう思ったけど口には出さなかった。
プレビューを見せてもらったけど、自分が思っている以上に自然だった。
周りから私たちはこんな風に見えるのか。
だけど、本当は恋人なんかじゃない。
全部偽物の、私たち。

「莉音?」

彼が私を呼んだ。
思わずハッとする。

「どした?なんかあった?」

私、そんなに顔に出てたんだ、と思った。

「思ってた以上に自然だったからびっくりしちゃった」

と答えた。
きっとうまく彼をごまかせたはず。

その後はぶらぶら歩いて、途中でお茶したり、本当に無計画なデートだった。
だけど、次はどこに行こうとか何を話そうとか全く気にならなかったし、沈黙があっても気まずくならなかった。
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