仮氏
彼とくっついている部分が全部ドキドキして、それが彼に伝わってしまうんじゃないかと思った。
きっとこんな風にドキドキしているのは私だけ。いつも、私1人だけだろう。


「莉音、ドキドキしてる?」

「え、何よいきなり」

私がちょうど考えていたことを聞かれて驚いた。

「莉音はさぁ、俺がテキトーだと思ってるでしょ?」

「うん、思ってる」

私がきっぱり言うと彼は笑った。

「テキトーだけど、テキトーじゃないよ」

「…は?」

「莉音に会う度ドキドキしてるし、多少は緊張したりしてる」

まっすぐな瞳でそんなことを言うから、そのまっすぐな瞳から逃げたくなる。

「う、嘘ばっかり…そうやって私のことからかって反応見てるんでしょ?」

「からかってないよ、マジだよ」

そう言って強引に彼の胸に手を持っていかれた。
本当だった。彼は私と同じくらいドキドキしている。
何と返していいのかわからず戸惑っていると、彼の顔が近づいてきた。

「ちょっと待って…」

「…待てない」

そしてすぐに唇が重なった。
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