仮氏
彼の本当の気持ちなんて彼にしかわからない。
私なんかがわかるわけない。
だけど私のことをちゃんと一人の人間として見てくれて、ちゃんと『女の子』として彼が扱ってくれることが嬉しかった。

友達はどんどん結婚していってしまうし、かと言って職場ではあんな感じだし、何をしてもなんだか取り残されているような気がした。
だけど、彼はそんな私を一応認めてくれているし、時にはハッとするようなアドバイスをしてくれる。
こんな私の生き方を『いいんだよ』って言ってくれているような、そんな風に感じる。

彼の体温に包まれて、ぼんやりそんなことを考えていた。

「どしたの?考えごと?」

そんな私に気づいて彼が声をかけてくれた。

「んーん、ぼーっとしちゃった」

「なに?疲れた?」

「…どういう意味?」

「あ、聞いちゃうそれ」

「別に聞く気も言わせる気もないわ」

「俺はもう一回してもいいけど!」

「そういうのいいから!!」

私がそう返すと彼は笑った。
そして私を自分の方に引き寄せると頬にキスをした。
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