仮氏
「とりあえず水飲んで」

彼はコップに注いだ水を差し出した。
私はそれをゆっくり、気持ちを落ち着かせるために飲んだ。

「何か考えてるんでしょ?」

そんな私を見ながら彼は言った。

「まぁ無理に聞き出すつもりはないから安心して」

それだけ言って彼は黙った。

今、私が考えてることを彼に伝えるべきだろうか。
きっと彼は大阪に行けって言うだろう。
そしたら私たちはおしまい。
それでいいのか?私。


(……よくない…)


自然とそう感じた。
大阪に行くか行かないかは、きちんと相手の話を聞いてから決めよう。
まだ、すぐに決断しなくていい。…というか決断したくない。
そんな簡単に私は彼との時間を捨てられない。
馬鹿な私。チョロい私。
自分が分からなくなって、ポロポロ涙が溢れた。
そんな私に気付いた彼は驚いていた。

「ごめん、なんか俺変な事言っちゃった?」

違うよ、私がごめんなさいだよ、そう言いたいのに上手く言葉が出なくて、精一杯頭を横に振ることしかできなかった。
そんな私の頭をポンポンする彼。
私は彼にギュッと抱きついた。

「ずっとこのままがいい…」

振り絞るように出た言葉に自分が驚いたけど、後悔はなかった。

「ん、そうだね」

彼は私の肩に手を回した。
あったかかった。
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