仮氏
重なり合った体から、彼の鼓動が伝わってくる。
なんだ、私だけじゃなかった。

「やべー。ドキドキしてるのバレた」

彼は笑った。だから私もふふっと笑って彼の胸に耳を当てた。
ドキドキはする。だけどなんだかほっとするようなそんな気がした。
自然に、彼の手が私の服の中に滑り込んでくる。

「ちょ…っと」

慌てて私は手を掴む。

「だめ?」

私は答えられない。

「やだ?」

そう聞く彼の目はまるで仔犬のようだ。
そんな目で訴えられたら、何て言えばいいかわからないじゃない。

「莉音は俺に触られるの嫌?」

「嫌じゃない…」

嫌ではないから、そう正直に答えた。

「そうやって、素直に言えばかわいいのに。」

「おっ、大人をからかわないで!」

「ま、そういうとこも悪くない」

彼は続けて私の胸に触れた。
直接触ってきたら止めなきゃ、とどこかで考えていた。
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