仮氏
そして、それは突然決まる。


『20時に駅ね!』


彼からのメール。
初めて時間と場所が指定されているメール。

一旦帰って準備する余裕はありそう。

そんな風に一瞬考えた自分にハッとする。
別に準備なんてしなくたって、会社帰りのそのままの恰好でいいじゃないか。
恋人とデートするわけじゃあるまいし。

とは思っていたものの、シャワーを浴びてメイクをして着替えてしまう私。
どこかで彼に会えるのを楽しみにしているのか、それともとりあえず体目的ではなさそうなことに浮かれているのか…。

言われた通り駅に向かうと、もう彼はそこにいた。
いつも適当で、軽い感じの彼なのにきちんと時間は守っていてくれたようだ。

まぁ、言い出したのはあっちなんだから当たり前だよね

とざわざわする気持ちを抑えながら彼の元へ向かった。

「…かわいいひとが向かってくるなぁって思ったら莉音だった」

目の前に立つ私に向かって彼は言う。

「…何バカなこと言ってるの?」

私の返事に彼はいかにも不満そうな顔をして、私の指に彼の指を絡めてきた。

「ちょっと!誰かに見られるよ?」

「別に見られたって構わないけどね、俺は!莉音は困る?」

「私は、困らないけど…」

「なら問題ねーじゃん」

彼はケロッと言うけど、あなたが連れて歩いてるのは年上の女で自慢できるようなもんじゃない。
ましてやあなたぐらいの歳の男の子は、若い女の子を連れて歩きたいもんじゃないの?と私は思った。
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