仮氏
「松本先輩は何が食べたいですか?」

「別に何でも構わないけど」

「うぅーん」

一生懸命悩む若宮くん。
彼ならきっと、パッと決めてたかもしれない。

「そんなに悩まなくてもいいのに」

「いや、でも…」

「若宮くんはお酒飲める?」

「まぁ多少は」

「じゃあ、駅前の居酒屋でいいじゃない」

でいいじゃないって言ってしまう私も私だけど、ただ後輩とごはんを食べに行くだけなんだから気取った雰囲気もおしゃれな空間も必要なんてない。
きっと年上の私が奢ることになるのだろうから、うんと高いお店に行って彼に変な気を遣わせるのも違うような気もするし。
駅前の居酒屋みたいなとこなら、彼も行き慣れてるだろうし。

ジョッキを傾けて、若宮くんとの「お食事会」が始まった。

「松本先輩はカレシいるんですか?」

「いないけど」

「えっ!まじですか?」

「嘘ついてどうするのよ」

「僕にもチャンスはありますか?」

若宮くんは悪くない。
悪くないけどなんだかゾワっとしてしまった。

「もっと若い人にアタックしたら?」

私はそう答えた。
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