仮氏
まるで昨日のことが嘘のように、普通に日常は始まる。
いつものように仕事をして、帰宅して…。
相変わらず彼からは気まぐれな程度に連絡がくるくらいで、あんなことがあったからといって私たちの距離が縮まるわけでもなかった。
むしろ、もうヤッてしまったのだから連絡は減っていく一方だろうと私は思っていた。
順番は違うけどそこから恋愛が始まるなんて漫画の中ではよくある話だ。
だけどこれは漫画の中の話なんかじゃなくて、現実。
だいたい付き合う前に体の関係を持ってしまえば、それ以上の存在になんかならないことはよーくわかっている。
そもそも、男なんてものは体の関係を持つまでは一生懸命頑張るけど、持ってしまえばまるで今までのことが嘘だったかのようになるものだ。

あと何回私たちは会うことができるのだろう。
あと何回私は彼の声を聴くことができるのだろう。

分かっていても自然とそんなことが頭を過ぎる。
そしてひとつ、溜め息を落とすのだった。
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