仮氏
事務所を出ると偶然若宮くんと一緒になった。
無視するのもおかしいから、並んで途中まで歩いた。

「松本さん彼氏いるんですか?」

「いたら残業ばかりするかしら?」

「じゃあ仕事が終わったら何をしてるんですか?」

「それ答えなきゃいけないこと?」

「……」

「なんで若宮くんは私みたいなババアを何度も誘うわけ?」

「…答えなきゃだめですか?」

「ま、答える必要はないわね」

若宮くんが乗るバス停まで着いた。

「それじゃあ、また明日」

私はそう言って若宮くんの方を振り向こうともしなかった。


「好き…っ、好き…だから…です」

若宮くんの声がどんどん窄んでいった。

「…ありがとう。」

私はふふっと笑ってそれだけ言った。
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