仮氏
と同時くらいに着信音が鳴る。

「…なに?」

「いや、今の何?」

「はぁ?何のこと?」

「好き…っだからです、ってやつ」

「……ストーカー?」

「なわけねーし。たまたま見かけただけ」

「あっそ。」

「冷たいんだな、莉音は」

「今更気付いたの?」

「…前から知ってる」

交差点の向かい側に、不機嫌そうに立っている彼がいた。

今の何?って素直に聞ける彼がちょっとだけ羨ましい。
私は聞けないまま、今に至る。


「私のことが好きなんだって」

目の前にやってきた彼に私は言った。

「ふーん。で、莉音は?」

「どうであってほしい?」

「…俺にとやかく言う権利ないから」

「ならやめなさいよ、その不機嫌そうな顔」

「あーっ!もーウザっ」

「はいはい。じゃ、またねー」

私はそのまま帰ろうとした。

「は?帰るの?」

「え?帰っちゃいけないわけ?」

「だめ」

彼は私の腕をがっちり掴んだ。
< 76 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop