仮氏
正直、こうやって落ち込んでる時に私を思い出してくれたことが嬉しかった。
ダサいところを見せてくれてるのが嬉しかった。
なんてチョロい女なんだろうって自分でも呆れる。
だから、私は覚悟ができない。

彼が清々しいほどのカス男で、完全にセフレとしか割り切ってないなら私だってそれなりの付き合いをするつもりだ。
それなのにこうやって甘えてきたり、私が元気のないときは逆に甘えさせてくれたり。
そんな彼の曖昧なところが私を惑わせる。
だから、この時間だけでも夢の中にいさせて欲しいとさえ思ってしまう。
これが彼の仕掛けた罠だったとしたら、私は当分ここから出られそうにない。


「嫌いになった?」

「は?何が?」

「こんなダサい俺見て。普通だったら引くでしょ?」

「別にぃ。辛いのにかっこつけてる方がダサくない?」

「さっすがオネーサンは違うね!タメだったら絶対嫌われる原因になってたわ」

「何それイヤミ?」

「違うって!」

「ばばぁでごめんなさいね〜」

私は彼を包んでいた手を解くと背中を向けて横になった。

「イヤミじゃないって!」

「…」

「怒った?」

「怒るわけないじゃない、こんなことで」

そう言うと彼は私の背中にキスをした。
体がビクッとした。
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