仮氏
「あ、でも今日はこういうことしないつもりだったんだ」

そう言って私から彼は離れた。

「じゃあなんで部屋なんて取ったのよ」

「ただ一緒にいたかったから」

「なら別にここじゃなくてもいいじゃない」

「久しぶりに莉音にあったら、なんかキラキラしててきれいだったから」

「ちょっと…からかうのはやめてよ」

「からかってねーし!少し会わない間にこんなに変わっちゃうから、なんか閉じ込めたくなった」

「なに言ってんのよ!」

「わかんねーよ、俺だって。考える前に体が動いた。それだけ!」

「それだけって……」

それ以上は言葉が出てこなかった。
その代わりに目が熱くなる。

「莉音?」

心配そうに私の名前を彼は呼ぶ。

「…なんで泣いてんだよ」

「わかんない。そんなこと言うなんて調子、狂う…」

やっぱり私にだって心はある。
そんな風に言われたら気持ちが揺さぶられる。
だって。
あなたのこと、嫌いじゃないんだから。
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