仮氏
「…泣くつもりなんてなかったのに。……なんか悔しい」

私がボソッと呟くと彼は笑った。

「いーんじゃね?俺はいろんな莉音の顔見られて得した気分だけど?」

でもそれって、私だけで隼くんは私にあんまりそういうところ見せないよね

そんな言葉が喉まで出たけど私はそれをぐっと飲み込んだ。

それから私たちはルームサービスを頼んで目の前に広がる夜景を見ながら軽く飲み直した。

「…一緒に風呂入る?」

「や!やだっ」

「は?いーじゃん何で?」

「いろいろ見られると恥ずかしいから」

「今さら!もう色んなとこ見てるって!」

「〜〜!!サイテー!」

彼は笑いながらバスルームに向かっていった。

私がお風呂から上がると、彼はベッドに横になっていつの間にか眠っていた。

「…こんな格好で寝て…。風邪ひくじゃない」

私はブランケットをそっと彼に掛けた。
眠っている彼の濃いまつげがゆっくり揺れている。
こんな無防備な寝姿を見せて、一体どういうつもりなんだろう。
そんな彼の額にそっと口づけをした。

「…………好きよ」

静かに呟いて私も横になった。
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