史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「それじゃ、また月曜日に」

冷たい風の吹くマンションのエントランスで別れを告げる。

霧島さんは駅まで送ると言ってくれたけど、断った。


「おぅ、おやすみ」

淋しそうに見えたなんて、やっぱり私の思い込みだ。

霧島さんはいつもと同じ会社の同僚に向ける笑顔で私を見送った。


霧島さんと別れるときは絶対に振り返らないというのが私の決めたルール。

霧島さんが決して振り返らないことはわかっているから。

後ろ姿を見つめるなんて、そんないじらしいこと私には似合わないもん。


「はぁ・・・」

思わずついた溜息が、宙に白く浮かぶ。


今日は振り返ってみようか。

霧島さんはきっともういない。

それを確認するのも良いかも知れない。

馬鹿な期待はさっさと打ち砕いてしまおう。


私は立ち止まって、振り返る。


元いた場所に霧島さんはいなかった。


「な、なんで・・・」


霧島さんは振り返った私の目の前にいて、大きな掌が私の肩を強く引き寄せる。

私の耳に霧島さんの冷たい唇が触れる。


ーー今日は帰んなよ。
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