七色の空
チャプター20
「理由1.片想い」

夜の井の頭公園。遊具などがあるちょっとした広場に福生と林檎がいる。林檎は手に花火セットをもっている。松葉杖の福生はブランコに腰をかけると、リュックからビデオカメラを取り出しスイッチを入れる。 ディスプレイに映る林檎がこっちを向いて、
林檎「花火どれからする?」
福生「林檎のお好きでどぞ」
林檎「福生はやらないの?」と、いいながら袋から花火を取り出すと、ライターで火をつける。
福生「おれ撮ってるからいいや」
花火の光で林檎の顔が明るく浮かび上がる。やはり可愛い。福生は林檎の夢を否定してはいなかったが、時折見せる林檎の無邪気な顔を見ると、林檎が女優として画面に映る姿を、平気な顔して見ていられるんだろうか?と不安になるときがあった。
目の前にいるのは可愛い普通の女の子だ。花火がとてもよく似合う。見た目や仕事でヒトはきめられない。人格で愛もきめられない。福生は目の前の女の子が好きだ。
それは、「死ぬまでにしたい7のこと」の4番目。いまのところは、片想い。
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