七色の空
チャプター38
「花瓶の花」
林檎は、嫌いなものは嫌いと受け入れ、つまらないものはつまらないと受け入れて生きている。一方、福生は全てありのままに受け入れる。極力感情を排除して物事に目を向ける。
二人の違いは方法論の違いだ。何も考えたくない時、考えたくないと考えて、林檎は考えない。福生は端から考えない。林檎は水の入った花瓶の花。福生の花は端から枯れて、棄てられるのを待っている。花瓶に水が入っていようがいまいが関係ない。
花は枯れて棄てられた時、花瓶から開放されるのか?水の入った花瓶の中で、花びらを広げ生を開放するのか?
 どちらにせよ、今日は林檎の誕生日!難しく考えたところで、歳はとる。時間は律儀にも正確に役目をはたしながら、大事な人をまた一歩死に近付けてゆく。 時間を見習って、律儀に生きることも大事なことだ。
人は悩む生き物で、それはそれで受け入れればよい。悩む事で生かされている生き物だ。
福生は今、林檎の目の前で生きている。きっと福生が死んでしまえば林檎は辛い。けれど、福生と迎えられる誕生日がなかったとしたら、そっちの方がよっぽど不幸だ。
福生と誕生日に食べる立ち食い蕎麦が、こんなにも美味い!
こんな風に老いぼれていくのなら、人生もそれ程、悪いもんじゃない。
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