七色の空

ﾁｬﾌﾟﾀｰ77
「ヒバリのこころ」

新也の部屋は、綺麗に片付けられており、清潔感がある。どちらかといえば、女性ウケの良さそうな気取った雰囲気の内装である。。
二人と一人は、お互いそれ程打ち解ける訳でもなく、しかし、どことなく興味を抱きながら、あまり意味があるとはいえない会話を繰り返す。気まずい空気という訳ではなかった。しかし、貴重な二人の時間にふさわしいとは決していえない。新也はどことなく寄り集まって騒ぐことが好きそうな系統の人物だったので、二人は何となく一緒にいることに抵抗はなく、福生が拒む素振りを見せなかったので、林檎は黙って福生に付き添った。林檎は新也に興味など全くない。街で声をかけられたのなら、路上でありきたりな言葉をいくつか交して、その場でバイバイで丁度よかったのだ。特に新也とセックスした事が気掛かりになってもいやしない。
福生は死を目前にして、自分のドラマに登場してきた新也という人物から、何となく話を聞きたかったのだろう。この先、福生が関わる新しい登場人物は限られてしまっている。その内の一人が意味もなく福生に関わり、福生はその無意味に耳を傾ける時間を惜しいとは思わない。