七色の空
「ヒバリのこころ」
〜つづき

福生と林檎が、そろそろ新也の部屋を出ようとしかけた頃、部屋のインターホンが鳴る。新也は玄関まで行くと鍵を開ける。新也の知り合いが、男三人で訪ねて来たようだ。
知り合いの三人組は、我が家気取りでリビングまで来ると、即座に林檎になれなれしく話しかる。男A「おぉー可愛いねぇ お姉さん!」
男B「さすが女優さん」
三人組は笑いながらテーブルを囲んで腰を下ろす。男達の振る舞いは、完全にその場の福生の存在を無視している。
福生も何となくその場の雰囲気に合わせて、愛想笑いを浮かべてみる。
その後も、新也の知り合い達は、明らかに福生を不愉快にさせるような林檎への絡みを続け、目の前に福生がいる状況下では、林檎の自尊心をも少しずつイラつかせてゆく。下品で無意味な下ネタと、林檎への下ごころ。普段なら適当に相手できる程度のバカな男達だったが、福生が隣にいることで、林檎にしても、いつもとは勝手が違う。
バカな男達は新也から林檎の話を聞いていた。バカな男達からすればAV女優は暇潰しのネタにはもってこいである。
徐々に男達の理性は失われてゆく。よく大学の体連部のヤツラが飲んだ勢いで少女を集団レイプしてしまうなどといった、クダラナイ創造力の欠片もない事件を起こすが、この時の新也の部屋は、およそソレに近い空気だったのだろう。
林檎が福生を連れて部屋を出ようと、意思表示したとき、男達は理性と呼ばれる人間の大事な知性を失ってしまう。
福生はこんなとき、何の役にも立たない。それは、福生が一番よく知っていた。
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