最後のひとしずくまで
顔の形を確かめるように、彼の手がそっとすべる。
「君はいつだって僕をサポートしてくれるじゃないか」
「そんな!」
先輩はいつもみんなのためになる仕事をしてて。
疲れてる人がいたら一息入れさせてくれたり、知らないうちに手伝ってくれてたり。
先輩の方がずっと、ずっとすごい。
「でも僕は君のおかげですごく助かってるし、君がいないと僕はなにもできないよ?」
自然とにじむ涙が彼の綺麗な顔を歪ませて、頬を転がり落ちていく。
ああ、なんて、優しい人なんだろう。
わたしの仕事を認めてくれる、わたしの仕事に価値を与えてくれる。
そんなこの人がとても好き。
「君もちゃんと、みんなのためになることをしているよ」
こくこくと頷く。
何度も、何度も頷く。
「ほら、だからもう大丈夫。お茶を入れて、持っていくんだろう?」
涙をぬぐって、コーヒーを入れなおす。
急須にお湯を注いで、湯のみに均等になるように入れた。
ひとりひとりの好みに合わせて濃さを、甘さを、変えて。
わたしの仕事。
今のわたしにできる精一杯のこと。
失敗してばかりだけど、わたしにだってできることがちゃんとある。
「先輩、わたしこれからも頑張りますね!」
にっこり笑って最後のひとしずくまで注ぎ終えると、よくできましたと先輩が優しく目尻に残っていた涙をすくってくれた。
*
【お茶汲み】
