閉じたまぶたの裏側で
3ヶ月後。


「芙佳、こっち終わった。」

「それじゃ次はこっちね。」

私と應汰はせっせとペンションの掃除をする。

調理場では今日も両親が仲良く宿泊客の食事の支度をしている。


あれから1か月後、應汰は会社を辞めて私のアパートに引っ越して来た。

應汰は私のバイトしているスーパーに就職して休みの日はペンションの手伝いをしてくれる。


私と應汰は先月結婚した。

結婚式はこちらに身内だけを呼んで、こぢんまりと済ませた。

式の後はペンションに泊まってもらい、両親の作った豪華な料理を振る舞った。

息子の突然の結婚に應汰の両親も驚いていたようだが、應汰の母親は高校時代の私の事を覚えていたようで、いつも應汰から話を聞いていたと言っていた。

後で、一体なんの話をしていたのかと應汰の母親にこっそり尋ねた。


“めちゃくちゃ好きな子がいる。将来絶対に芙佳を俺の嫁にする、って言ってたのよ。”


有言実行だ。

應汰らしい。


最初の約束通り、應汰は私をとても大事にしてくれる。

私だけでなく、私の両親の事もとても大事にしてくれる。


口は悪いけど、とても優しい。

それはずっと前から知っている。


私は今日も、應汰に愛されている喜びをかみしめる。

この先ずっと、應汰を誰よりも愛して生きていきたい。


目を閉じても、勲との悲しかった恋の記憶はもう蘇らない。

ただ、かつて私を愛してくれた人の幸せを心から願う。









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