閉じたまぶたの裏側で
應汰の頭の中は、私を食う事しかないのか。

夕べ勲に抱かれたのに、昨日の今日で應汰となんてありえない。

それに私はまだ應汰と抱き合いたいと思えるほど、應汰の事を好きじゃない。

いくら應汰が好きだと言ってくれても、私自身に愛のないセックスをして、後悔なんかしたくない。

どれだけ應汰に強引に迫られても、絶対流されないようにしなきゃ。


「まぁいいや、今日はどんだけ芙佳がかわいくても我慢する。とりあえず11時半に迎えに行くわ。芙佳の家、どこ?」

家の場所を應汰に教える事に、少し抵抗を感じた。

勲と鉢合わせとか…ないか。

ここにはもう来ないでって、夕べ言ったし。

だけどやっぱり、今はまだ應汰とは距離を詰めすぎない方がいい。


家の場所を詳しく教えるのはやめて、近所のコンビニで待ち合わせる事にした。

マンションの周りは道が狭くて車を停車しづらいし、コンビニでコーヒーでも買っておくと言うと、應汰はすんなり納得した。


着替えようと部屋着を脱いでクローゼットの前に立った時、ドアに付いている姿見に写る自分を見てため息をついた。

首筋や鎖骨の辺りに、夕べ勲がつけたキスマークがいくつもその存在をアピールしている。

どうしようかな…。

胸元の開いた服は應汰の欲情を煽るといけないからやめておこうと最初から思っていたけど、首筋を隠すには…スカーフ?

仕事の日はひとつに束ねている髪も、今日は首筋を隠すために下ろしておこう。



< 34 / 107 >

この作品をシェア

pagetop