閉じたまぶたの裏側で
料理を作るのはいいとしてどこで作るのか?

「應汰、普段料理はする?」

「いや、しない。」

「じゃあ調味料とか調理器具とかそろってないよね。」

「芙佳の部屋は?」

私の部屋は…。

確かにそれなりに料理ができる程度の物はそろっているけど、もしかして勲が…と思うと、やっぱり安易に私の部屋に應汰をよぶわけにはいかない。

「やっぱり今日は外で食べる?」

「イヤだ、芙佳の作った飯食いたい。」

應汰は駄々っ子みたいに首を横に振る。

「それじゃ、簡単に材料そろう物でいい?フライパンとか鍋とかまな板と包丁くらいはあるんでしょ?」

「それはあるぞ。」

「じゃあ應汰の部屋にしよ。」

「よし、そうと決まればまずは買い出しだ。」

應汰は嬉しそうに私の手を引いて歩き出した。

「あ…言っとくけど、突然襲いかかるとかナシだからね?!」

「んー?ダメかぁ。料理の後は芙佳も食っちまおうと思ったのに。」

少なからず身の危険を感じる。

私は應汰の手からそっと手を離した。

「やっぱりやめとこうかな…。」

應汰は慌てて私の手を取り握り直した。

「バカ、冗談だ。約束したからな。無理強いはしない。」

「ホントに?」

「ああ。芙佳との約束は守る。」

私との約束は、って…。

應汰、ちょっとかわいいな。

「わかった。それじゃ、パスタにしよう。」


誰かのために料理を作るなんて久しぶり。

“芙佳の作った飯食いたい”なんて言ってくれるの、今は應汰だけだ。







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