閉じたまぶたの裏側で
近所のスーパーで材料を買って、應汰の部屋にお邪魔した。

ここに来るのは2回目だ。

最近は休みの日も会っているけど、いつも外で会うからお互いの部屋を行き来したりはしていない。

「芙佳が来るならもっと綺麗にしとくんだったな。」

應汰が買い物袋をキッチンの調理台の上に置いて、ぐるっと部屋を見渡した。

「気にしないで。」

私は買ってきた食材を袋から出して調理台の上に並べる。

「とりあえず座ってコーヒーでも飲むか?」

「うーん、一度座って落ち着いちゃうと、腰が重くなるからこのまま作るよ。」

「そっか。あー、今日汗かいたから、風呂入ってきていい?」

「どうぞ。」

應汰はネクタイを緩めながら、やけに距離を詰めて私の隣に立った。

「何?」

「んー?芙佳も汗かいただろ?一緒に入る?」

「確かに今日は暑かったから、ちょっと汗かいたかなー。だが断る。」

「つれないねぇ…。でもまぁ、芙佳が汗かいてたって、俺は全然気にしないけどな。」

笑いながらバスルームへ向かう應汰の背中を見て、私はまた少し身の危険を感じた。

冗談…だよね?

確かに應汰の事はいいやつだと思うし、嫌いじゃない。

一緒にいると楽しいし、すごく落ち着く。

だけどまだ私は應汰の事、ちゃんと恋愛対象として好きだとは思っていないんだと思う。

ずっと友達だと思ってきたし、いきなり應汰との恋愛とか結婚とか、考えるのは難しい。


あの時だって、お酒の勢いがなければキスなんてしていない。




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