閉じたまぶたの裏側で
恋の返り血



翌日。

應汰との待ち合わせ場所に出掛けようとしているとチャイムが鳴った。

ドアモニターには應汰の姿が映っている。

突然どうしたのかと慌ててドアを開けた。

「よう。」

「どうしたの?確か駅前で待ち合わせじゃなかった?」

「うん…。ちょっといいか?」

何か話したい事でもあるのかな?

「じゃあ…中でコーヒーでも飲む?」


部屋に入るように促し、コーヒーを淹れた。

應汰がこの部屋に来るのは初めてだ。

一体なんの用だろう?

カップに注いだコーヒーをテーブルに置くと、應汰はゆっくりとそれを一口飲んだ。

何か話したい事がありそうなのに、應汰は黙りこくってコーヒーをすすっている。

「ねぇ應汰…どうかしたの?」

しびれを切らして尋ねると、應汰はカップをテーブルの上に置いて私を見た。

「芙佳…まだ彼氏と会ってるのか?」

予想外の事を言われた。

「…会ってないよ。」

私が答えると、應汰は目を見開いた。

「嘘つくなよ。」

應汰はポケットから何かを取り出してテーブルの上に置いた。

それは私の免許証入れ。

「え…?なんで應汰が…。」

「昨日、芙佳を送って帰ろうと思ったら助手席の下に落ちてた。」

もしかして…鍵を探してた時に、バッグから落ちたのかも…。

「すぐそこの信号待ちで気が付いてすぐに戻って来たんだ。そしたら…芙佳がマンションの廊下を男と歩いてるのが見えた。」

「あ…。」

まさか、その人が勲だってバレたんじゃ…。


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