閉じたまぶたの裏側で
海辺の町で、あなたと



両親と一緒にペンションの仕事をし始めてから半年が過ぎた。

私が働くようになってから、機械に疎い両親のためにペンションのホームページを作った。

宿泊した客がお礼のコメントを書き込んでくれたり、次の予約を入れてくれたり、客とのコミュニケーションが取りやすくなったと両親も喜んでいる。

私も少しは両親の役に立っているようだ。


夏の間は海水浴に訪れる客で賑わっていたペンションも、シーズンオフになると驚くほど暇になる。

近くの観光地を訪れる客が1日に一組か二組、まったく予約のない日もある。

シーズンオフの間、空いた時間は近くのスーパーでレジのバイトをする事にした。

スーパーで働いているのは近所の主婦とおじさんがほとんどで、歳の離れた私を可愛がってくれる。

そろそろ結婚の話はないの?と聞かれたりもするけれど、そんな浮いた話はまったくない。


ここに来てしばらくは、アパートに帰って一人になると、いろんな事を思い出して寂しかった夜もあった。

眠る前に目を閉じると、恋人同士だった頃の勲の笑顔が浮かんだりもした。

今はどうしているかなとか、幸せでいてくれたらいいなとか、そんな事が頭をよぎった。


そしていつも眠りに落ちる前には應汰の顔が浮かんだ。

何も言わずに應汰の前からいなくなった事、怒ってるかな。

もしかしたらもう、他にいい人ができたかも。

そんな事を考えながら眠りについた。



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