おいしい時間 しあわせのカタチ
「セロリ? セロリってまだ採れるんですか?」
「ああ。色もいいし、葉っぱもみずみずしいから全部食える。店で使うなら、すこしまけよう」
ふうん、と佐希子はすこし考える。セロリか。
一昔前なら信じられなかったけれど、今ではセロリもパクチーも、佐希子よりうんと年上の世代でさえなんの抵抗もなくもりもり食べるようになった。
健康食材という観点からはもちろん、火を通しても食感が楽しいセロリやズッキーニは、ここ最近、枡屋でも欠かせない食材になっている。
「――いいですね」
「よしきた。――蒲谷くん、蒲谷くん! ちょっと!」
手を叩いてセロリを箱ごと持って来い、と指示する社長を横目に、佐希子は手帳を取り出して、今日のおすすめに一品足そうと頭をひねる。
(シンプルに炒め物もいいけど、今日はたしか挽き肉がお買い得の日だったような)
図らずも今日は金曜日。しかも一日晴れの予報。
普段とはすこしちがう、さまざまな客層が入り混じって賑わう日。
鋭気を養うためにも肉、若い人はとにかく肉。寒くなってきた今の時期に嬉しいのはなんと言っても煮込み物。
(それだったら、合うのはやっぱりビールかしらね)
ゴンさんに相談してみよう、と携帯電話を取り出したとき、
「――そういや佐希ちゃんよぉ……」
いつも明るい社長がやけにもじもじと憚るように声をかけてきたのに、佐希子もすこし身構えた。