おいしい時間 しあわせのカタチ
エコバッグに入りきらないほど、思いがけず大量になってしまった荷物を空の段ボール箱につめ、厚意で借りたカートに載せて帰るとき、事務所につづく外付けのドアから作業着姿の若い男の人がふたり、社長といっしょに出て来るのが見えた。
目を転じれば、近くに、作業着に刺繍されたものと同じ名前の書かれた小さなトラックを発見する。
何か大きいものでも注文していたのだろうか。
「ありがとうございました、またよろしくおねがいします」
「こちらこそ頼むよ。君らんとこは椅子一脚から引き受けてくれるからありがたい。おっと失礼――佐希ちゃん、今帰りー? 車貸そうか?」
あまりの声の大きさに、直前まで喋っていた男の人たちはもちろんのこと、ただの買い物客たちまでがなにごとかと佐希子を振り返る。
佐希子は内心で苦笑した。
あれでこそ社長――とは思うものの、先ほどの今で、素直に喜ぼうとすれば戸惑いが邪魔をして、うまくいかない。
「免許忘れたのでー。これ、後で返しますねー」
「あいよー」
せめても明るく振る舞うと、佐希子はがたがたのコンクリートの上を、手こずりながらもカートを押して、帰路についた。