おいしい時間 しあわせのカタチ

「っあー、染みるー。歯に!」

「歯かよ。医者行け医者」


 へへ、といたずらっぽく目を細めると、ゴンさんはどこか釈然としないものを口の端に留めながらも肩をすくめて、そっとグラスを前に出した。

 乾杯しようと言うのだ。


「佐希子がお客の付き合い以外で飲むのは久しぶりだからな」

「あら、そうでした? ならせっかくですし、奥のふたりも呼びましょうか」


 丹後くんも根岸くんも店の近くに住んでいて、自転車や徒歩で店にやってくるから問題はない。

 ふたりの分の冷酒を用意しながら、ガラスに映るゴンさんの背に、


「――あのふたり、きっとああ見えて、やることはやってると思います」

「ほう、そりゃまたいきなりすごい展開だな。女の勘か?」


 ふふ、と佐希子は口元だけで笑いながらお酒を注ぎ、ふたりに声をかけた。


「彼女は自分のことをわかってないんです。携帯でつながるだけの恋よりも、別のところでつながっていられる恋愛のほうが向いてるって」

「おいおい、若い女がそんなこと、こんな時間に堂々と言ってんじゃねぇよ」

「別に恥ずかしいことではないでしょう?」

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